京 : |
(一体、どうなってやがる! ユキまでが、まるで知らない人間を 見るような顔をしやがって…) くそっ… わけが分かんねぇぜ!! |
ブラウン博士 : | うむ。ワシも見ておったぞい! 草薙君よ、それこそがまさに 世界の危機その物なのじゃ!!! |
京 : |
うぉっ!? なんだよ、アンタは… 一体どこから降ってきたんだ? |
ブラウン博士 : | そんな些細なことはどうでも良い! それより、まずは事態の説明じゃ! |
京 : |
…あぁ? さっきの世界の危機とか? 言うやつのことか? 生憎だが、 そんな妄想につき合う暇は── |
ブラウン博士 : | 果たして妄想かのぅ? 突如、おぬしの体を満たし始めた 強大なエネルギーの本流…… そう… 例えば空を飛び、鋼を打ち抜く程の 内なる力の高まりは。 |
京 : |
──確かに。かつて無いくらい力が 湧き上がってくるのを感じるけどよ… アンタ、 なぜそんな事を知ってるんだ!? |
ブラウン博士 : | 待て待て!? そう慌てるでない! これらは全て歴史を操る者たちの…… いや、ジオギガスの成せる業なのじゃ! |
京 : |
すると何だ? そのジオギガスって野郎をぶっ倒せば この事件にも、カタが着くってのか? |
ブラウン博士 : | 概ねそんな所じゃな。しかし… こうも簡単に信じてもらえるとはのぅ。 少々拍子抜けな感じじゃなぁ。 |
京 : |
へっ。 別に信じちゃいねーよ。 まずはジオ…なんとかってのを ブッ飛ばす。 それで収まらなけりゃ、次はアンタだ。 簡単な話だろ? |
ブラウン博士 : | …………。 | 京 : |
さて、面倒だがとっとと片付けるか! |
マルコ : | かぁ〜っ…!! 舐められたもんだぜ。 悪人退治のメンバーが、よりにもよって こんな素人さんとはねぇ。 |
京 : |
へっ、言ってくれるぜ。軍人崩れが… 生憎その素人さんは、売られたケンカは きっちり買ってやる主義なんでね。 |
マルコ : | 誰が崩れだ!! オレは正規軍の軍人なんだよっ! まったく…(ボソボソ) こいつが部下なら侮辱罪で 軍法会議もんじゃねーの? |
京 : |
独り言は済んだかい? 実力を見たいってんなら…… 草薙の拳、たっぷりと拝ませてやる! |
マルコ : | OK! MISSION START── DA〜ZZE!!!! |
マルコ : | あ゛〜〜だから素人はヤなんだよ… 銃弾かわしたり、 炎でかき消しやがって… そんな兵隊がいるかってーの。 |
京 : |
へへっ、まさか本職のあんたの方が ここから先の闘いの 足出まといになりそうとはね。 |
マルコ : | あー……はいはい。 分かりましたよ。どーせオレは 25歳のしがないロートル。 後のことは若いモンたちに任せて さっさと退役して恩給暮らしでも すりゃあいいんですよねぇ……へいへい。 |
京 : |
いつまでブツブツ言ってんだ? …ほんと面倒なおっさんだぜ。 えーと。まぁ、その……あれだ! あんたは、あのブラウンとか言う博士を 守ってやれよ? 本部の防衛ってのも、軍人としちゃ 大事な仕事なんだろ? |
マルコ : | おおっ!? その手があったか! コホン…では、前線攻略は任せたぞ? 草薙二等兵の健闘を祈る!! では── |
京 : |
おい、ちょっと待てよ、二等兵だと!? 俺は軍人じあねえってんだよ! |
アテナ : | そこまでです。 止まってください! |
京 : |
なんだ、アテナかよ。 おどかしやがって… こんな所で、また超能力の特訓か? しかし…時間の壁も越えるだなんて サイコソルジャーってのも大した── |
アテナ : | !! どうして私の秘密を 知ってるんですか!? あなたは…一体? |
京 : |
(こいつは、ユキや真吾と同じ現象… それともこの時代…過去の世界の アテナなのか?) 未来から来た。 …なんて言っても、そう簡単に 信じちゃもらえないんだろうな。 詳しく説明してるヒマは無いんだがな… あんたの敵じゃないのは確かだよ。 悪いが、そこを通してもらうぜ? |
アテナ : | ……未来から? もし、その話が本当なら あなたの存在は危険すぎます。 残念ですが、突然世界を取り巻いた 不穏な気配との関連性が確認できるまで 身柄を拘束させてもらいます! |
京 : |
…ったく、ヒマねぇって言っただろ! 聞き分けが無いのは、 今も昔も相変わらずか…… 仕方ねぇ。 こうなっちまった以上、俺たちの流儀で 決着つけるしかねーだろ…? 俺を止めたきゃ、腕ずくで来るんだな! |
アテナ : | そんな…正義が負けるだなんて…… |
京 : |
あのな… だったら何だ、この俺が悪役なのか? |
アテナ : | …はい。 そして、正義は必ず勝利するのです。 例え一度、悪に敗れようとも! |
京 : |
お前…言い切りやがったな。 |
アテナ : | 当然です! なぜなら、サイコソルジャーこそ 人々を守る正義の戦士なのですから。 |
京 : |
(正義感で凝り固まっちまってるな… ってことは、俺の知ってるアテナは 随分マシになってるワケか) ま、どっちでもいいさ。 俺は正義や悪には興味が無いんでね。 ともかく俺の勝ちのようだし、 今日の所は、ワルモノの草薙様が 大手を振って通らせてもらうとするか。 |
アテナ : | ………むぅ。 |
京 : |
…だがよ もし俺を行かせたことで、この事件が 解決したら、どうするつもりだ? そん時は、俺が正義ってことだよな。 だったら、俺の邪魔をしたあんたは ワルモノってことなのか? |
アテナ : | そ、それは── でも、正義は守られなければ… だから…力を持つ私たちが…… |
京 : |
俺も、こだわるつもりは無いんだが 暴力振るっておいて正義だ悪だと 押しつけんのはやめてくれ! |
アテナ : | ……分かりました。 ではここから先、あなたの行く末を しっかり見届けさせてもらいます。 |
ルガール : | ほぅ? 誰かと思えば、これはとんだ珍客だ。 よもや貴様自身が時を越え… こうも容易く再会出来ようとはな! |
京 : |
ルガール!? テメェ、生きてやがったのか! |
ルガール : | この混沌とした時の流れにおいて 生きる、死ぬなど些細なことよ。 今や、支配者ありきという 過去の恐怖その物が、 私を不滅の存在へと昇華させたのだ。 |
京 : |
…また訳の分からねぇことばかり ほざきやがって… テメェの悪党っぷりは相変わらずだぜ! |
ルガール : | ……悪か。 だが、何を持ってそれを定める? 悪が正しくないと、何故に言い切れる? 貴様自身の…、 力を以って敵を正そうという行為は 同じ悪意に根ざすものではないのかね? 私は理解したのだよ、力こそ全てだと! 人の世の善悪など、所詮歴史の陰に咲く 徒花に過ぎないのだよ! |
京 : |
演説は終わったかい? 相変わらず、くだらねぇ御託だけは 一人前みたいだな。 |
ルガール : | ふむ…貴様には少々難し過ぎたか? …言葉で理解出来ぬなら、 力で理解するがいい! |
ルガール : | ほぅ? 思った以上にやるではないか。 …フン、この辺りが潮時か。 |
京 : |
はっ…! 手加減でもしてるつもりかよ? だったら本気でかかって来やがれ! そのニヤケ面に、嫌ってほど 俺の拳を叩き込んでやる!! |
ルガール : | …ふん。 本気で無いのはお互い様と言うことだ。 貴様の本当の力… かつてこの私を倒した力が、 その程度であろうはずが無い!!! 私はここで、 その力すら凌駕するのだよ。 本気を出さぬ貴様などに用は無い! |
京 : |
なんだと!? テメェ…!! |
ルガール : | それに、生憎私も忙しい身の上でね。 貴様たちが追いかけるジオギガス── 私も興味が湧いてきた… 折角の機会だ。 一足先に会わせてもらうとしよう。 |
京 : |
逃がさねぇぞ! 待ちやがれ!! |
ルガール : | ……逃げる? それは弱者が強者に対して 行う行為であろう。 まぁいい。 私と本気で闘う気があると言うのなら そのまま進んで来るがいい。 私は一足先に、次の舞台へ 行かせてもらうとしよう。 ハァーッハッハッハッハッ!!! |
あかり : | お!? 変わったカッコした兄ちゃんやね。 さてはあんた、未来人やな? |
京 : |
なんで分かるんだよ? いくらなんでも、俺の強さが 時代を超えるほど有名ってワケでも あるまいし… …ああ、そうか。 ブラウンのおっさんの紹介だな。 |
あかり : | ちゃうちゃう! 教えてくれたんは、恩人の ジオギガスっちゅうおっちゃんや!! |
京 : |
ジオギガスが恩人……? どういうことだ。 まさか、奴の仲間なのか!? |
あかり : | う〜ん、話せば長いことながら… 実はちょっと前に、 いけ好かんお殿様が、家来を連れて 妖怪狩りにやって来よったんや。 あかりさんの奮闘も空しく あわや、妖怪たちの命も風前の灯── …あわや! ちゅう所で、あのおっちゃんが 「がっはっは、力試しじゃー!」言うて お殿様を吹っ飛ばしてくれたんよ。 |
京 : |
全然長くねぇ…。 しかも、それは単純に暴れたかった だけじゃねーのか? |
あかり : | 何言うてんねん!? 袖摺れ合うも他生の縁! 一寸の悪にも五分の魂!! 悪人や、結果論や言うたかて、 助けてもろといて恩義に感じな ウチの女が廃るわ! というワケやから、 頼まれた「ぼうがいこうさく」 きっちりやらせてもらうでぇ! |
京 : |
ちっ…面倒臭ぇがやるしかねぇか! |
あかり : |
あたたたた…… なんやねん、この兄ちゃん。 えらい「すとろんぐ」やんかぁ。 |
京 : |
悪かったな。 手加減できるほど、 器用じゃ無くってね。 さて、事のついでだ。 ジオギガスの居場所ってのを 教えてもらおうか! |
あかり : |
ああ、おっちゃんの行き先かいな? ええよ。 バッチリ教えたるわ! ここからずーっと西に進んだ 急に景色が変わる場所、 まだ、その辺りにおるはずやで? |
京 : |
お、おいっ……いいのかよ!? さっき、恩があるとか 言ってただろうが? |
あかり : |
それはそれ、これはこれや! 恩はさっき十分返したし、 やっぱ悪人は倒さなアカンやん!! 恩を返したのはあくまでウチの心意気。 だからゆうて、悪い奴の仲間に なったかどうかは別問題や! |
京 : |
そう言うもんなのか…? |
あかり : |
そやで! 善悪なんちゅうもんは、元々人間の 内側だけにあるもんやよってなぁ。 あんまり細こう縛られ過ぎとったら、 なんも出来んようになってしまうで? ほな、ウチはもう帰らせてもらうわ。 兄ちゃんも悪人退治、頑張りや! |
庵 : | ぐぉぉぉぉぉぉぉ |
京 : |
八神の野郎…… またオロチの力なんかに 飲み込まれやがったか。 |
庵 : | きょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ! |
京 : |
(言わば純粋な暴力だな……やれやれ。 もしこいつに負けたら、奴が正義って ことになるのかね…?) (──いや、違う! これを…こんな物の後付けで 善悪を語っていいわけがねぇ!) (…でも、善と悪。 力を以って敵を屈服させる行為と 何が違う? どこが違う?) |
庵 : | ぎょぉぉぉぉぉぉ!!!! |
京 : |
!? やべぇ…ボーッとしてたか? ガラにもねぇ…!! ほんと、やっかいな野郎だよ。 面倒臭ぇが、目ぇ覚まさせてやるぜ!! |
庵 : | ぐぅっ……ハァハァ…ハァ…… |
京 : | やっと目を覚ましやがったか…。 |
庵 : | 京……貴様…。 この俺の無様な姿を笑いに来たか…! |
京 : | …ったく。 いちいち絡んで来るんじゃねぇっての。 えー…ああ…!! これは俺の独り言なんだがな。 俺の知り合いに、面倒な野郎がいてよ。 やっかいなモン背負い込んでるくせに まるでそんな素振りを見せやしねぇ。 それどころか人のことばかり 目の敵にしやがって、事あるごとに 突っかかって来やがる…。 例えハンデを背負い込んでいたって 小馬鹿に出来るような相手じゃねぇ。 だがよ、弱った奴とでは燃えねぇ。 全力を出し切れる状態で、思いっきり ぶちのめさなきゃ、意味がねえんだよ。 |
庵 : | ……………………。 …くっ………ならば、これも独り言だ。 …貴様を殺すのは俺だ…! その時まで待っているがいい……京!! |
京 : | へっ…よく言いやがる… いつもと変わってねぇじゃねーかよ。 余計なこと言ってねーで、 さっさと傷を治して出直しやがれ!! |
シェルミー : | あら、ようやくワタシの知っている 草薙が来・て・く・れ・た・の・ね? |
京 : |
お前の知ってる草薙だと? どういう意味だ! さっさと答えやがれ! 俺以外に草薙を名乗る奴に会ったのか? |
シェルミー : | あらあら… こういうところも 遺伝しちゃうのかしら? 同じような構えに… 同じようなセリフ… それに同じように燃える瞳… いいわね。 その苛立ちに燃える熱い視線… どんな宝石よりも綺麗だわ。 うふふふっ。 嬉しくって濡れちゃいそう… ──あなたの血と汗、好きな方でね。 アハハハハハハハッ!! |
京 : |
ちっ…! 答えるつもりが無いのなら 力ずくでも聞き出してやる!! まずはその軽口が叩けなくなるよう 思いっきりぶっ飛ばしてやるぜ!!! |
京 : |
あんたが望んだ草薙の炎だ… どうだ、これで満足かい? 満足したなら、 さっさと答えてもらおうか! |
シェルミー : | ふふ… わざわざ答えなくたって、あなたも 本当は気づいているんじゃないかしら? |
京 : |
気づいている…? どういう意味だ! |
シェルミー : | 今の混沌とした世界の生み出す可能性… かつての…そしてまだ見ぬ草薙の 血を継ぐ者の辿った軌跡。 ほんと…随分と罪作りな機械よね。 好きな時代で、好きな相手に そっと囁くだけでいいなんて── 「選ばれし英雄たちよ。 正義のためにその力を貸してくれ」 |
京 : |
!! |
シェルミー : | せいぜい、あなたも頑張りなさい。 正義の味方さん? …ううん。その必要もないのかも。 あなたが倒れた所で、きっと代わりは 大勢いるはずだもの………………ね? |
京 : |
おっと。 随分と色っぽいお出迎えだな。 どこかのクノイチといい勝負だぜ。 |
いろは : | 理解しております。 …あなた様は、 ジオギガス様に仇なすお方。 なんの恨みもございませんが、 お命、ここで討たせていただきます! |
京 : |
やれやれ…またかよ。 どうせあんたも、あのジオギガスに 恩義があるってクチだろ? |
いろは : | 恩を受けしは旦那様唯一人。 あのようなお方には、何ら恩義を 感じたことはありません! |
京 : |
それじゃなんだ? ひょっとして……脅迫? |
いろは : | …………。 |
京 : |
図星かよ…参ったな。 こいつはちょっとばかり… いや、やりにくすぎる相手だぜ。 運命のめぐり合わせってのが、こんなに 恨めしいと思ったのは初めてだ。 |
いろは : | 恨みつらみは覚悟の上です。 例え憎まれることになろうとも…… お命頂戴いたします! お覚悟っ!! |
いろは : | そんな… 私が負けてしまっては…旦那様の… 村の方々を救う未来の薬が…… |
京 : |
負けられないのはお互い様だ! 少なくとも俺にだって、ここで 倒れるわけにはいかない理由がある。 |
いろは : | ジオギガス様は── あの男を追って来る方は、人々を守る 正しいお方と聞いていました。 …ならば皆様のため、 私を助けていただけると信じて おりましたのに…… |
京 : |
それは俺に負けろってことか? 悪かったな… でも、俺は……!! |
いろは : | …申し訳ございません。 見ず知らずの方にこのような泣き言を。 これでは…旦那様に叱られますね? 勝ち得た者はあなたです。 私は残される者として、せめて 胸を張って送り出すとしましょう。 |
京 : |
(……くそっ、参ったな。 これじゃむしろ放っておけねぇよ) …………ん? そういやあんた、 未来の薬って言ってたな? 確かあのおっさんも、ジオギガスと 同じ未来から来たって話だったから 薬の一つや二つ持ってるはずだ!! |
いろは : | それは本当でございますかっ!? もし本当なら、いろはは…いろはは… |
京 : |
それじゃ、ブラウンのおっさんには 俺が話をするから、あんたは 自分の村で待っててくれよ。 |
いろは : | ありがとうございます! なんと素敵な方でしょう。 もちろん、旦那様の次ですが……くすっ このご恩、一生忘れません。 では── |
クーラ : | 止まって。 ここは…クーラが通さないよ! |
京 : |
クーラ? ネスツの関係者が どうしてこんな所に居るんだよ!? まさか… 今回の事件に、テメェらの組織も 一枚噛んでるんじゃねぇだろうな! |
クーラ : | …そんなこと知らないよ。 クーラはただ…悪い人をやっつける。 炎を使う……Kナンバーのオリジナル… |
京 : |
ふざけんなよ。 俺の邪魔をしやがって…しかも 言うに事欠いて、悪人呼ばわりかよ! いくら見知った仲だろうと そこまで言われりゃ容赦しねぇぞ! |
クーラ : | …ジオギガスって人が言ってた。 悪いKをやっつけて、いい子にしてたら …K’たちも戻って来るって! |
京 : |
まったく… ダマされるにも程があるだろ? これだからガキの相手はやなんだよ。 |
クーラ : | …子供じゃない! クーラたちを馬鹿にする…悪いヤツ。 絶対に……やっつけてやる! |
クーラ : | 痛い……痛い痛い…。 K’はこんなことしないのに… だから、火を出す人は大嫌い! |
京 : |
(やれやれ。 これだけの力を持ってるクセに、 中身はまるで子供だな……) ええと…そうだ、クーラ! お前にウソを教えたジオギガスって 奴のこと、俺に教えてくれないか? 教えてくれたら、俺がそいつを こらしめて来てやるからよ? な、悪い話じゃないだろ? |
クーラ : | べー…だ! 教えてなんかあげないよ。 勝手に自分で探しに行けば…? この先に居るなんて… クーラは…教えてあげないよ! |
京 : |
この先か… ほんと、こういう所だけは 分かり易くて助かるぜ。 |
クーラ : | 勝手に行けば…? クーラだって…帰るもん。 |
KUSANAGI : | 随分遅いご到着だな? すっかり待ちくたびれちまったぜ。 |
京 : |
へっ…性懲りも無く、 またクローンのお出ましか? …いや、この感じは 神楽の鏡か!? |
KUSANAGI : | ご名答だぜ! テメェのサビついた実力を 改めて確かめようって寸法だ! |
京 : |
そうか……好きにしな。 |
KUSANAGI : | けっ…スカしやがって。 そんな調子で、このオレに勝てるとでも 思ってんのか? |
京 : |
ただ神楽のコマとして 役目が終われば消えるだけ。 お前らはそれで満足なのかよ? |
KUSANAGI : | …知ったことかよ! コマだろうと、消え去ろうと そんなこと今のテメェにゃ関係ねぇ! |
京 : |
…………。 |
KUSANAGI : | シケた面しやがって… だったらオレが、テメェの目的って奴を ハッキリ思い出させてやらぁ!!! |
KUSANAGI : | くそっ…… 派手にやってくれたじゃねーか。 手加減って言葉、知らねーのかよ! ま、どの道オレは消える運命だ。 何だってかまわねぇんだけどよ。 |
京 : |
…………。 |
KUSANAGI : | なんだよ、いつまでもジメジメと テンション低い野郎だな。 …ったく! 確かにオレは消える身だ。 だがたった今、テメェと闘った。 そいつは変えよう無い事実だろうさ。 オレの拳が掠めた右頬。 炎が巻き上げたテメェの髪。 互いに刻み込んだ事実は消えねぇ! 大体オレは、すぐに消える身の上だ。 だから、あがく時間すら勿体ねぇ。 ウジウジ考えてるヒマがあったら 与えられた任務の中に、どれだけ 自分って存在を刻み込めるのか! その追求こそが、オレの意思の証明だ。 本物よりも前向きってモンだろう? 違うのかよ…ああ? 本物さんよぉ! |
京 : |
…ったくベラベラと。 本物の俺と違って、よく喋る偽者だな。 鏡だからって、そこまで反対とはな。 |
KUSANAGI : | ははっ…! ようやく調子が戻ったか! そう来なくっちゃ。 大体、テメェら人間だって、 たかだか数十年の人生だ。 オレなんかと大差ねーよ。 クヨクヨ悩むヒマがあったら、もっと 自分の心に正直に生きたらどうだ? こんな風に……消える前に…よ…… |
京 : |
ああ、分かってるって。 テメェの分まで、草薙の炎を悪党共に 叩き込めって言うんだろ……上等だ!! |
クリス : | アハハハハ! 無事にここまで来るなんて── ひょっとして歴代英雄の中の 最高記録じゃないのかな? さすが草薙って、褒めてあげるよ。 |
京 : |
うるせぇ! …どいつもこいつも、 勝手なことほざくんじゃねぇ!! |
クリス : | へぇ… ひょっとして、あの博士に 手駒にされたことを怒ってるのかな? 正義のため、悪を討て! そんな言葉を本気で信じてたんだ。 言葉なんて上辺だけ。 人がただ身勝手なだけの生き物なんて とっくの昔に分かっていたことなのに。 |
京 : |
…………。 |
クリス : | もっともそのお陰で、ボクにとっては 住み易い世界に変化してくれたから 感謝してあげたいくらいだけどね。 キミやボクも……それだけじゃないよ! フウマやハンゾウ…ジャンヌって 名乗る女も居たんじゃないかな。 過去や未来のボク自身、そして それと闘う多くの戦士たち── 善悪の区別さえなく… 力ある全ての者たちが英雄と呼ばれる 力のみが支配する世界! 最高じゃないか!!! |
京 : |
うるせぇっ! …その愉快なおむつにゃ聞こえねぇか? 何度も言わせるんじゃねぇ!! |
クリス : | へぇ、すごい怒りを感じるよ。 そろそろキミの準備も 出来たと思っていいのかな? それならかかって来なよ? 今の時代の「英雄」候補!!!! |
京 : |
どうだ、草薙の炎の味は!! 俺が少しくらい迷った所で、 テメェをブチのめすくらいワケはねぇ! |
クリス : | ちぇっ…この時代のボクは どうやらまだ、復活が完全じゃ なかったみたいだね。 |
京 : |
今さら負け惜しみかよ? 相変わらず格好つかねぇ野郎だな。 |
クリス : | キミだけには言われたく 無かったけどね。 大体、キミはこの先どうするの? 信じていた人間に裏切られてさ、 使い捨てにされたのに。 そんな目的を無くした状態のまま まさか、これから先も闘うつもり? |
京 : |
その、まさかさ。 生憎と俺はひねくれ者でね── 他人に利用されるのは嫌いだが それ以上に、テメェらのご希望なんぞに 応えてやる趣味はねぇからな! |
クリス : | 随分吠えてくれるじゃないか。 …だったら好きにしてみれば? 怒りに染まったままの心で その炎が、いつまでも赤い色を していられると思うなら。 きっと、すぐに分かると思うよ? キミも含めた人の愚かさが…… オロチの意思こそが正しいってね。 ハハハハハハハハ… アーッハッハッハッハ! |
ジオギガス : | ガハハハハハハハ! なんだ今頃来やがって。英雄にも 時間にルーズな奴が居るってかぁ? |
京 : |
お前がジオギガスかよ…。 よりにもよって、化けた相手が オロチの四天王とはな。 奇妙な因果を感じるぜ。 |
ジオギガス : | 慄けぃ! 元々最強のギガス様が、 さらに最強の力を得たのだ。 もはや全ての世界! 全ての時代に敵の一つもねぇんだよ!! |
京 : |
くだらねぇ。 力だけで勝てると思う辺りが 既にテメェの限界だ。 |
ジオギガス : | はん! さっき相手してやった女も 同じような口ぶりだったが、今こうして 立っているのはこのオレ様だぁ! 思えばあいつも、正義だ心だと クソやかましい小娘だったぜ あの程度の超能力しか 使えぬ分際でよぉ! |
京 : |
!? まさかアテナのことか!! あのバカ、待ってろって言ったのに… |
ジオギガス : | なるほどなぁ…あいつの言ってた クサナギってのは、ひょっとして テメェのことか? 追い着くまでの足止めとか言ってたが… 役立たずな仲間を持って 草薙くんもお可愛そう…ってかぁ! |
京 : |
てめぇぇぇえ!!!! |
ジオギガス : | ガハハハハ! さっさとかかって来やがれ。 テメェの力もいただいてやる!!! |
ジオギガス : | グガァァァ…… ば、ばかな…このジオギガス様が…… パワーもスピードも上のはずなのに。 なのに、なぜ負ける!? なぜに勝てぬ!!!!! 理論上、あり得ない…… |
京 : |
単純な力じゃねーんだよ。 俺の持つ炎…草薙の── 邪悪を祓うための力って奴はなぁ! |
ジオギガス : | …………力? ハッ、そうか! オレ様の知らない未知なるパワー!! ええい! こんな姿はもういらぬ── !! その力…キサマの持つ 「祓うための力」とやらを オレ様に渡すのだぁぁぁあああ!!!! |
京 : |
(うぜぇ…) テメェじゃ一生手に入れられねーよ。 力しか目に入らねぇ馬鹿にはな。 さて… アテナのことも気になるし、 そろそろ幕を下ろそうぜ!! |
ジオギガス : | キ、キサマ…!? ま、待て!やめろっ! やめろ、やめろぉ…………ひいっ!! |
京 : |
くらい── やがれぇぇぇええええっ!!!!!!! |
ジオギガス : | …ふふ、お待ちしていましたよ。 ようこそ! 貴方自身が眠るべき墓穴へ。 |
京 : |
ゲーニッツ!? どうして、テメェがここに! いや……この感じ、何か違うな。 テメェ、一体何者だ! |
ジオギガス : | データ照合…… オロチ衆サンプルNO.004 固体名称:ゲーニッツ。 ──ご名答です。 さすがに、あなたが苦い思いを持つ者を 忘れることなど出来はしませんか。 草薙…京。 時を旅するその中で、無論あなたの事は 調べさせていただきました。 そのあなたが、私が吸収した力の中で、 最も苦手とする男──だからこそ、 この姿を選ばせていただいたのですよ。 |
京 : |
くだらねぇ! 確かに一度は敗れたかもしれねぇが、 そいつはもう過去の話だ。 テメェへのリベンジは、 とっくの昔に果たしてやったぜ!! |
ジオギガス : | ふふ…… 随分と動揺しているようですね。 もしかして焦っているのですか? それこそ、 私は本物の彼では無いというのに… |
京 : |
ゴチャゴチャと能書きはたくさんだ! 本物だろうがニセモノだろうが、 草薙の炎で焼き尽くしてやるぜ!!!! |
ジオギガス : | ガァァァァア…!!! なんだこの力は…!? データとは全く違う── |
京 : |
月並みなセリフ過ぎるんで カッコがつかずに悪いんだがな… 人間ってやつは、成長するんだぜ。 俺自身の力と、草薙の炎もな。 いつの記憶か知らねーけどな、 そんな過去のデータで 人間様を計ってんじゃねぇ!! |
ジオギガス : | ぐ……不確定な変動要素の計上を 失念するとは…この私としたことが…… |
京 : |
分かってねーな。 いつまでも他人の力を借りてるんじゃあ テメェ自身にも勝てやしねぇよ!! |
ジオギガス : | データ吸収型の私では、 自己成長する人間には勝てぬとでも…… くだらぬ!!!! ええい! もうこやつの姿はやめだ!! 人の姿になどこだわるから負けたのだ。 オレ様の蓄積した全データ。 矛に盾、炎に氷…… 風に雷にそれから大地のエネルギー! 全ての力を寄り合わせ、その姿も 新たにうちゅう最強の── |
京 : |
それだけの力、どうまとめるつもりか 知らねーが… そんなにやりたきゃ勝手にしやがれ |
ジオギガス : | ぬがっ! うぬぅぉぉぉぉっ…力の…パワーの… コントロールが効かぬっ!!!! |
京 : |
哀れな奴だな。 それが出来ないから、今まで人の姿を 借りてたんだろうに…… |
ジオギガス : | 馬鹿な…ばかな…バカな…バカナ…… このようなところでぇぇえぇぇえぇ!! うぉあぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!!!? |
京 : |
おいおい…こいつは何の冗談だ? いくら俺が強すぎるからって、生身の 人間相手に戦闘機の登場とはね。 |
ナレーション : | ──Pi |
ブラウン博士 : | …薙君。 ……こえておるか…草…君よ? |
京 : |
あぁ? …ブラウンのおっさん。 これがあんたの言ってた ジオギガスかい? 見てみろよ? なんだか、予想以上に とんでもねーことになってるようだぜ。 |
ブラウン博士 : | うーむ、なるほどのぉ… こやつはSYDV… ワシの住む時代よりも遥か未来。 連合軍が作り上げた戦闘機の原型じゃ。 正式名称はSYD3式SS── Scutum Striker! まさに”盾を貫く者”の名に相応しく、 敵の防衛ラインを突破して、中枢攻略の 電撃作戦を成し遂げた英雄機じゃな。 |
京 : |
そんなことは聞いてねぇ! こんなデカブツ相手に どうするんだよって聞いてんだろうが! …ったく、何か弱点とかねぇのかよ? |
ブラウン博士 : | 無いのぅ。 まぁ、あえて言うとすればじゃが…… Good Luckじゃ! 草薙くん。 |
京 : |
オイ…ざけんじゃねぇぞっ! こうなったら仕方ねぇ… 未来の兵器だかなんだか知らねぇが、 この草薙の拳で、叩き落してやる! |
京 : |
へへ、燃えたろ? どんな凄い兵器か知らねぇが、 乗ってる奴のウデが三流だったら お話にもならねーぜ? |
ジオギガス : | なんだと!? 人間風情が…このオレ様に向かって ふざけた口をたたきおって! |
京 : |
こいつが…ジオギガスか? |
ジオギガス : | いかにも、このオレ様こそが うちゅう最強のおとこ! そして、今はこのSYDVの 頭脳をつかさどる最強のちせい! ジオギガスだ!! |
京 : |
なるほどな… ウデが三流ってのは訂正するよ。 この場合、あんたの頭脳が三流だな。 さすがに、未来の機械だけあって、 能力だけは凄そうだがな。 |
ジオギガス : | おのれ、おのれぃ! こうなれば改めて、このオレ様の 凄まじさを見せつけてくれるわ!! む、エネルギー切れに、弾切れだとぉ? ええい、なにか他に… ぶ、武器は無いのか!?武器は!? ……ん? なんだこのスイッチは!? (──ポチリ) |
SYDV : |
自滅モード承認完了…… これより全ての操作をロックし、 消滅シークエンスに移行します。 警告します。 乗員および付近の生命体は30秒以内に 本機より20メートル以上の距離を── |
ジオギガス : | 20メートルぅ!? 逃げねば! 早く逃げねばっ………はうっ!? しまった、同化しておるわ! こ、これでは逃げられぬ!? |
京 : |
どうかしてるぜ。 ほんとによ… まぁ、弱くはなかったが 残念だったな…………………色々と。 |
ジオギガス : | ……………………………。 |
京 : |
オロチ…… いや、こいつがギガス…? どっちだ!? |
オロチ : |
…その者ならば、とうに滅びたわ。 所詮、人の作りし存在が 我の力を取り込もうなど愚かなことよ。 彼の者の力の残滓が、わずかながら 暴れているが……いずれ消えよう。 全ては我の…ガイアの元に 還る定めにある物なり。 …人の定めもまた然り。 |
京 : |
はじめから面倒な事件だとは 思っていたが…最後の最後で一番 やっかいな奴がお出ましかよ… |
オロチ : |
輪廻を乱し、世界の調和を汚した人間が さらに時までも手中に治めようとは…… 人の業の深さ、まさに極まれり。 草薙の末裔よ… 時を越えて、 ここまで辿り着きたる者よ。 お前の辿りしその道は、 人の歴史と同じ物。 まさに合わせ鏡のような存在だ。 思い返してみるがいい。 いかなる時代においても争いの 火種のみを撒き散らす、その様を。 ただ悪戯に、命の価値を汚す愚かさを。 その業の深さゆえ…… 人は滅ぶべき存在なのだ。 |
京 : |
へっ…言われてみればそうかもな 確かにブッ通しての闘いだったし、 自分勝手は承知の上さ。 裏切ったり、利用されたり… オマケに人の業の深さってのも 認めてやるよ。 …だが! 俺は悪戯に── 意味も無く闘ってるわけじゃねぇ! 俺はユキに会いたい! 俺が知る、俺の事を知っている そのままのあいつに… 人の業…とやらの結末だろうが、 この気持ちが在るべき場所は 俺たちの時間での人生だけだ! 例え誰が相手だろうと、奪われた物を 取り返す邪魔だけはさせやしねぇ!! オロチ──俺はテメェの大好きな ありのままに生きて… そして勝ち取ってやる!行くぜっ!! |
ジオギガス : | 我が…負けるのか……? …この……ジオギガス…様が…… 否……それは依代にすぎぬ…存在。 |
京 : |
これは!? オロチとジオギガスの意識…? この二つが混ざり合って… それで急に統制がとれなくなったのか。 迷惑な野郎だったが、最後の最後で 借りを返してもらった気分だな…へへっ |
ジオギガス : | 我に伏せ…我が意に従え…… この星を…数多の命を食いつぶす その前に……… 人の子よ…お前もまた── |
京 : |
やだね。テメェにだけは従わねぇよ。 人間ってのは、そう簡単に割り切れる程 器用に出来ちゃいねえからな。 そりゃあ、地球全体って規模で見たら ちっぽけなクセに迷惑すぎる存在かも 知れねーけどよ。 …それでも生きてる! 泣いたり…て、俺はやらねえけどよ。 まぁ、笑ったり、怒ったり色々あるさ。 お前が地球を好きっていうのと 同じくらい、俺にも守りたい物がある! だから…だから── |
オロチ : |
…………………。 |
京 : |
……くそっ、なんかワケが分からなく なってきたぜ! つまり、何度だってテメェと 闘ってやるって話だよ!! 文句は言わせねぇぜ、この野郎!!!! |
オロチ : |
…………理解した。 ならば…我は再び眠りに就こう。 だが…ゆめゆめ忘れるな…… 人が愚かな行いを繰り返すなら… 我は何度でも目覚めよう… それを近い未来とするか… 久遠の彼方とするか……… それを決めるのは… お前たち人間であることを……! |
ジオギガス : | ガーハッハッハッハッ!! ついにこの力を手に入れたぞ これぞ最強、Ωの力!!! |
京 : |
ルガール、テメェ!!! …いや、姿は同じだが何かが違う。 ひょっとして、 お前がジオギガスって奴なのか? |
ジオギガス : | いかにも! だが、少々来るのが遅かったようだな。 ヌハハハハハハハ! ヤツもまた、強大な力を求めて彷徨い そして何やら愚策を弄したようだが あえなく吸収されるとは… まったくもって愚かなヤツよ! おかげで予定より早く、最強の力を 手に入れることが出来たわい! |
京 : |
情けねぇ…ルガールの野郎、 筋肉ダルマに返り討ちにあうとはな。 |
ジオギガス : | ガハハハハ! 責めるのは酷というものだ。なぜなら! 最強のギガス様が相手だからな。 おぉぉぉぉぉぉ この体! この力! なじむ、なじむぞぉぉぉ!!!!!! キサマも折角やって来たのだ。 この体の力試しに、 少々付き合ってもらおうか! あまり簡単には死んでくれるなよ? ガハハハハハハハ |
ジオギガス : | ぬがぁぁぁあぁぁあぁぁあああ! バカな…この程度の力しか 出せないはずが…… うおっ………!? なんだ…オレ様の力が吸い尽…… そん…な……消えて……ゆ…く……… …………………。 |
Ωルガール : |
……ほう? これがジオギガスとやらの力か。 思ったより悪くはないな! |
京 : |
…まさか!? 今度は、本物のルガールなのか? 一体どうなってやがるんだ。 |
Ωルガール : |
フン…くだらぬ話よ。 私がジオギガスの意識を乗っ取るのに 少々手間取ったと言うだけのな。 ヤツが闘いにかまけている隙に その意識を深層から喰らいつくして やったと言うわけだ。 しかし、英雄きどりの馬鹿者のお陰で こうも容易くことが運ぶとは… ご苦労だったな? |
京 : |
テメェ…!! |
Ωルガール : |
強がるのはやめたまえ。 どうせ、ジオギガスとの闘いで 大した力も残していないのだろう? キサマの愚かさにより 手に入れたこの力! おかげで私はとても気分が良い。 その気分に免じて 見逃してやろうと言うのだ。 せっかく拾った命、もう少し 大事にするがいい。 ハッーハッハッハッハッハッ──! さらばだ、草薙京。 |
ブラウン博士 : | おおっ!? とうとうやりおったな草薙君。 さすがは希代の英雄じゃ! まったくもって感心したぞい。 |
京 : |
そんなことよりアテナを頼む! 早く診てやってくれ! こいつ、無茶しやがって… |
ブラウン博士 : | ふむふむ……? うむっ、命には別状無しじゃ! 疲労で、気を失っておるだけじゃろう。 |
京 : |
……心配させやがって。 それじゃ、後は目が覚めるのを 待つとするか。 |
ブラウン博士 : | そのことなのじゃが… 草薙君よ── 出来れば彼女には、会わないように してもらいたいのじゃ。 |
京 : |
は…? どういうことだよ。 |
ブラウン博士 : | 既に気付いておるのじゃろうが このアテナ君は、おぬしの世界の アテナ君では無い。 余り関わり過ぎると 歴史に悪い影響を与えかねんのじゃ。 ジオギガスが倒れ、歴史が 修復されようとしている今なら なおのこと。 |
京 : |
やれやれ…面倒な話だな。 それじゃ、そっちはあんたに任せるよ。 俺も大事な用があるんでね。 悪いが先に帰らせてもらうぜ? |
ブラウン博士 : | ほほ〜〜ぅ? …さては、例のユキちゃんとか言う 彼女に会いに行くつもりじゃな? |
京 : |
…なっ!? そ、そんなんじゃねーよ。 その…… ちょっとした野暮用だ! |
ブラウン博士 : | わはははは! 語るに落ちるとはこの事じゃ。 |
京 : |
ちぇっ…。 ま、かまわねぇか。 それじゃ、またなおっさん。 もし── こんなヤバイことが起こったら、 すぐに知らせてくれよ! |
京 : |
……ふぅ これで終わりだな。 ──それで? おっさん、この後は一体 どうすりゃいいんだ? |
ブラウン博士 : | うむ。既に手は打っておいた! 悪人共が消えた今、後は歴史が自動的に 修復されるのを待つばかりじゃ。 それから… タイムマシンの封印かのう。 |
京 : |
封印? どうせなら、後腐れ無いように ブッ壊しちまおうぜ! |
ブラウン博士 : | いかん、いかん!! それはいかんぞ、草薙君!! 今回の事件が、後の世に致命的な問題を 残す可能性も捨てきれんのじゃ。 そうなった時のために、 万一の保険として 残しておく必要があるのじゃよ。 |
京 : |
ちぇっ… 面倒な話だぜ。 |
ブラウン博士 : | まったくじゃな。 …じゃが、これもワシが背負おうべき 責任なのじゃろう。 これからは、決して 悪用されることの無いよう 守り続けてゆくつもりじゃよ…。 |
京 : |
まぁ、なにかあったら連絡してくれ。 気が向いたら、手を貸してやるぜ。 |
ブラウン博士 : | ををっ!? 少し引っかかるが、ありがたい話じゃ! ──じゃが……そんな話をされては おぬしを懐かしむあまり、ワシ自身が 問題を起こしてしまうかも知れんのぅ。 |
京 : |
カンベンしてくれ…。 …でも、もしそうなった時は ハッキリ思い出させてやるよ。 草薙の炎は、 誰にも消せないってことをな!! |
京 : |
ふぅ… これで終わったか。 さーて、後はブラウンのおっさんに 連絡して── |
ブラウン博士 : | た、た、た、た、大変じゃ──!!! 草薙君よ、えらい事になったのじゃ! |
京 : |
いきなりなんだよ! ジオギガスなら、 もう俺が倒しちまったぜ? |
ブラウン博士 : | うむ。 それはワシも確認しておる。 じゃが…… 逆に分からなくなった物が あるのじゃよ。 |
京 : |
…だから、なんの話だよ? 勿体つけずに言えよ! |
ブラウン博士 : | タイムマシンじゃ…。 タイムマシンが 消えてしもうたのじゃよ!!! |
京 : |
消えたってなんだよ! まさか…盗まれたってのか? |
ブラウン博士 : | う──む…確証は無いのじゃが その可能性が高そうじゃなぁ。 恐らくは、ダムドの生き残り…か。 きゃつらが何をするつもりか分からんが 放ってはおけん! 草薙君よ、すまんのじゃが もうしばらく力を貸してはもらえんか? |
京 : |
おいおい、考えるまでもねぇぜ… どっちにしたって、タイムマシンを 取り返すまでは帰れないんだろ? …乗りかかった船だ。 面倒だが、こうなったら最後まで 悪人退治に付き合ってやるよ!! |
京 : |
……はぁ…はぁ……くっ… これで…終わったのか? |
ブラウン博士 : | ──いや、 まだ最後の仕上げが残っておるのじゃ。 |
京 : |
ブラウン!? あんた…いつの間に── ぐあぁぁっ!! |
ブラウン博士 : | …やはり、読みどおりじゃな。 闘いの直後ならば、ワシでも おぬしのような英雄を倒せると。 草薙君よ… すまんが、このまま眠ってくれい。 |
京 : |
……どういう事だ。 なんで…あんたが俺を…… |
ブラウン博士 : | 残念じゃが、時間を越えた人間を、 そのままにしておくわけには 行かんのじゃ…。 |
京 : |
くそっったれ… …最初から…そのつもり…だっ…の… |
ブラウン博士 : | 許してくれい…草薙君よ。 |
京 : |
……。 ………。 …………。 …うっ……ん…。 ここは… ……公園? なんでこんな所に… それに… 俺は一体…… (何だか大事なことを 忘れてる気がするが…) そうだ! 確かユキに会いに行こうとして、 それで… それで… 俺はどうしたんだ!? くそっ…気持ちわりぃ! 仕方ねぇ、こうなりゃ 真吾の奴でも呼び出して── |
ブラウン博士 : | 本当にすまんな、草薙君。 歴史への影響を抑えるために おぬしの記憶を消させてもらったよ… もう、会うこともないじゃろうが… ………………………………元気でな。 |
京 : |
……くそっ!! ジオギガスは倒したってのによ!! |
ブラウン博士 : | 落ち着くのじゃ、草薙君! まずは、力を回復させねば!! |
京 : |
問題ねぇよ! すぐにでも奴を追いかけて……くっ!? |
ブラウン博士 : | それ見たことか! 立っているのが不思議なくらいの 状態なのじゃぞ。 まずは体を休めるのじゃ! 傷の手当もせねばならんしのぅ。 それに…… もはや、きゃつの痕跡は消えておる。 見つけ出すことすら、困難じゃろう。 |
京 : |
……くっ!! あんた、偉い博士なんだろ! なんとかならねぇのかよ? |
ブラウン博士 : | 無理を言わんでくれ! それに、おぬしとの闘いで きゃつも傷を負っておる。 傷が治るまで動きそうにない奴を 見つけ出すなど至難の業じゃ。 |
京 : |
分かったよ… 放っておくのは性に合わねぇが 今はガマンしてやるよ。 …だが、傷が癒えた時 奴はまた動き出すんだろうな… 次こそは本当の… 草薙の炎を味あわせてやる。 ルガール!!! その時まで、首を洗って 待っていやがれ!! |