ひらひらと胡蝶が舞っている。
陽光のどかに、風も洋々。
畳に背をつけていた守矢は、ゆるやかに午睡の目を開けた。
一の字に開いた両腕が重い。
義妹と義弟に貸している。
幼い弟妹は屈託もなく、義兄の腕を枕にしたまま、深く眠りこけている。
動くことはできない。
守矢は苦笑し、なすすべもなく青空を見た。天地さかさになった瞳には、庇が天に、空が地と見えた。
青い大地を、白雲が優雅に漂っている。鳥の鳴き交わす声が和やかだった。
森を抜ける風の音、応える葉ずれに、左右の弟妹の寝息が重なる。
かけがえのないぬくもり。
この子たちと兄弟と呼び合うようになってから、どれほどの時が経つのか。
ばらばらに芽吹き、ひとつの大樹に継がれた子葉。故郷の歌も知らないそれぞれ。
大樹は幼芽を護り育てた。その大らかな枝に抱かれるうちは、時も優しく、平易に流れた。
ただ自分たちは、訪れる日ながを享受して、懸命に生長へ励めばいい。
義弟がころろと寝返りを打つ。義妹も無心に目をこする。
春風やさしい、うららかな日。
限りない緑陰に安らいで、今一度守矢は、瞳を閉じた。