「はじめまして」
その背の高い青年に、少女はそう言った。
少女の桃色の頬、穏やかな瞳。
柔らかな存在感。
青年の、黒い瞳が少女を見つめる。
その視線はあまりにまっすぐで、ともすれば失礼なほどだったけれど。
微笑のままに、少女は青年のまなざしを受け止めた。
青年の涼しげな目元、秀でた額。
水際立った佇まい。
凛々しい眉が、ちょっと動いた。
何かを思い出しでもするような顔で、それでも、言った。
「ハジメマシテ」
無愛想だが、よく透る声だった。
笑顔で少女は会釈する。
青年も頭を傾ける。
「よろしく」
声が重なった。
思わず笑った。笑い合った。
この子。
この人。
可愛いな。
それが二人の始まりだった。
ほんの千と八百年ばかり前にもこの国で同じようなことがあったのだけれど、そんなこと、二人は知らない。
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