47 「サヨナラは言わない」



 ああ、なんだっけ?
 俺は、何て言ってお前と日本で別れたっけ?


 目の前が真っ白。
 何も見えねえよ。


 オロチはどうなった?
 神楽は?


 八神は?





 何も聞こえない。
 全て終わったのか。


 全て。



 …。



 …なんだってんだよ。一体。


 俺と神楽と八神…草薙と八咫と八尺瓊が同じ場所に揃って。
 俺たちの目の前で復活しやがったオロチと、1800年前とそっくり同じに戦った。
 あの鬱陶しい八神の野郎と、あろうことか協力までしちまって。


 笑っちまう。
 結局、何もかも運命ってやつの言う通りじゃねえか。


 だから。俺も。


 俺の命も、ここで終わったっていうことなのか。
 草薙の家に生まれて、オロチを払って。
 己の宿命ってやつを全とうできた…そういうことか?


 生まれてきた意味は果した。
 この命も、もういらねえのかな。





 …けど。


 待て。待て待て、待て。





 ユキはクシナダ





 あのデカい白髪がそう言いやがった。


 オロチの復活を完全なものにするための鍵。
 クシナダって女がオロチの力を集めるアンテナなんだと。
 その生まれ変わりがユキなんだと。
 運命ってやつだと、言いやがった。


 何のことだ。
 ユキは。
 ユキは何も関係ねえ。


 運命だと?
 俺たちはただ。


 普通に出会って。
 普通に一緒の時間を過ごして。
 普通に…。……







 それだけだ。
 俺たちは。何者でもねえ。



 俺たちなんだ。



 …冗談じゃねえ。
 サヨナラなんか言うもんか。
 俺は死なない。死ぬわけがない。
 お前のもとに帰るんだ。
 だから、だから…。





「ユキ…」






 待って、いてくれ。













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