〜 橋上 〜





 寝付け無かった。何度も寝返りをうつが、妙に目が冴えてしまっている。
 胸がそわそわする。
 気分転換。夜風に当たろう。
 真冬の深夜にも拘らず、寝ている楓を起こさないように家を出た。


 月明かりだけが頼りの暗闇。
 あの橋に繋がる小道を、満天の星空を背に歩いた。
 胸を締めつける焦燥感は増す一方だった。
『どうしてだろうか?』
 こんな気持ちになったのは。
 楓が四神として、青龍の力に目覚め、そして、もう一人の自分自身を受け入れ、守矢の後押しもあり、嘉神慎之介を止めた。その直後、守矢とあの橋上で逢った、否、すれ違っただけ。
 その瞬間の時の気持ちとこの気持ちは似ていた。


 昨日の新雪がまだ残っている。薄っすらと白く染まっている。朱塗りの名も無い橋。
 楓には、皆には内緒で、よくここに来ていた。あの人と最後に会ったこの場所に。何をするわけでもない。ただ、橋下に流れゆく川水を見ているだけ。そう、あの人の事を思いながら。


 降り積もる新雪を踏みしめ、傍に歩み寄る気配がした。
 心地良い懐かしい想いに陥った。
 そして、暖かった。


 守矢は自分の外套を掛けてくれていた。


「守矢…どうして?」
 息災など聞くまでも無い。自分の苦行など口にしない人だ。
「虫の知らせかもしれん。今、雪…おまえには逢っておかなければならない気がしてな。」
 楓は心配するまでもない。楓なら出来る事を知っているような物言い。
 素っ気無い。本当に必要以上にもの言わない。以前と変わらない。
 守矢との再会に嬉しさが込み上げてくる。


 嬉しい。でも、あの人は旅に出てしまう。己の為に。私たちを想って。私にはあの人に何も出来ない。だから、せめて邪魔をしたくはない。あの人に必要以上に心配をかけてしまわないように。


 橋下の川水は流れゆく。
 夜が白々と明るくなってきた。楓もそろそろ起きる頃だ。
「楓には黙っていろ。もう帰れ。」
 雪は嬉しさとは別に、嬉しさ以上のものを感じ、涙腺が緩んだ。
 頬につたう雫。
 守矢は雪の頬に触れた…




せいさんから頂きました守矢雪小説です〜。
2幕が始まる前に二人きりで何か語らっててくれたらなぁと
私も願うことしきりなのですが(笑)
せいさんのこのお話はそんな私をかなりめに
ドキドキさせてくれました(もう二人が喋るだけで嬉しい)!
続編もあるとかで♪楽しみでございます♪
(もう貰った気でいる私→殴)
本当にありがとうございましたっ♪