じっと、二人は抱き合っていた。 雨だれの音も、蝉の声も、二人には聞こえない。 世界に在るのは自分たちだけのように。 声はなかった。決して言葉にはならない言葉を、お互いの熱に感じている。 鼓動の音に耳を澄ませる。限りない安息が胸の内に広がっていく。 時の流れも忘れてしまって。 そっと、京はユキの肩を抱いた。ユキは顔を上げる。 見つめ合い、瞳を閉じ、もう一度、二人は口づけを交わした。